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冬の六甲山 | 野草と作物

アジサイ

枯葉に包まれたアジサイの冬芽。葉を剥がしてみると、ちょうど二枚貝のように葉が合わさっている様子が確認できます。
アジサイの冬芽のように芽が露出しているものを裸芽(らが)といい、六甲山ではサンショウやムラサキシキブなどが裸芽をつけます。
写真には写っていませんが、茎の途中には側芽(そくが)という一対の芽が複数ついています。アジサイは頂点の芽と周辺の側芽が花、それより下の側芽は葉に生長する、という特徴を持っています。
そのため頭頂部を切らない場合、長く伸びすぎた茎の先に花が咲き、チョウチンアンコウの突起のような姿になってしまいます。DOKIでは8月に剪定を行っています。

キブシ

コウヤマキは一科一属一種のオンリーロンリーな樹ですが、キブシも日本国内に限れば同科同属の仲間が発見されていない種です。
3月から5月の間に鈴なりに咲く薄黄色の花は、天ぷらやおひたしとして、かすかな苦みを楽しむ野草食にすることができます。
実はタンニンを多く含むため食用には向きませんが、黒や灰色の染料として利用されていました。木五倍子(きぶし)という名前も、ヌルデの木につく染材である五倍子(ふし)の代用品として使われていたことが由来のようです。
食べても染めても魅力的なキブシ。大切に育てていきたいと思います。

クロモジ

クロモジの冬芽。先端の大きな芽が葉、左右一対の芽が花になります。
DOKI周辺によく見られるスギやヒノキ、アカマツは背の高い高木林を形成しています。それらの下には種々の低木が茂っているのですが、葉の少ない冬季は、ひと際濃い色のクロモジの枝が良く目立ちます。
また、本種はその特徴的な香りも同定の道しるべとなります。枝葉からは木の爽やかな香りに甘み、そして柑橘類に似た香りもかすかに感じられます。
和菓子切り用の高級つまようじや石鹸、和製アロマオイルなどに加工されているほか、変わり種としては灰汁を濾してクロモジ茶としても楽しめるようです。

コウヤマキ

冬焼けて茶色になったコウヤマキの葉。枯れているわけではなく、春が近づくにつれ緑色に戻っていきます。放射状についた葉の中心におへそのように付いているのは花芽で、形から雄花のように見えます。
現存する唯一のコウヤマキ科の植物で、さらには日本固有種と、かなり特殊な立ち位置にある種です。なぜこのようなことが起きたのでしょうか。
本種はスギやマツなどの裸子植物が誕生した中生代に登場し、ユーラシア大陸北部を中心に広く分布しました。しかし氷河期の訪れとともに大陸の種は絶滅、氷床の存在しなかった当時の日本列島に、コウヤマキは生き残ったのです。このような種を遺存種といい、樹木ではイチョウやセコイアなどが有名です。

ツリガネツツジ

擬宝珠のようなツリガネツツジの実。タネがはじけた去年の抜け殻が枝先に残っています。
六甲山では数が少なく、一般に想像されるツツジの花らしからぬ小さな釣り鐘型の花を付けるため、やや地味な存在です。
しかしながらクリーム色に紅を散らした花は可愛らしく、やわらかな香りとともに、山あさりのさなかに見つけるとつい嬉しくなってしまう種でもあります。
別名の薄黄瓔珞(うすぎようらく)も、その色と、花の形が仏教装飾の瓔珞に似ていることから名付けられました。

フキ

霜やけた葉の中にうずもれるようにして、早くも芽吹いたフキ。春を告げるフキノトウは野草料理の代表格ですが、撮影したのは1月末。まだまだ寒さの厳しい時期でした。
気候変動の影響かな?とも思いましたが、撮影日を七十二候の暦で見てみると、ちょうど款冬華にあたることが分かりました。読みは「ふきのはなさく」で、まさしくこの時期。思っていたよりずっと早く、春は足もとまでやってきていたようです。
早摘みのフキの蕾は苦みが少なく、佃煮や天ぷら、ゆがいて味噌和えにと、様々な料理で楽しむことができます。

ミツマタ

ミツマタの実…ではなく、これもまた冬芽。枝先のクチバシのような芽は葉に、そして手前にある毛むくじゃらの塊が花になります。
銀白色の絹糸光沢を示す部位は鱗芽(りんが)。冬の寒さから芽を守ってくれる存在ですが、どこか蜘蛛の体を彷彿とさせるディティールです。その名の如く枝先に三つ又になってぶら下がっている姿には、眺めているとむずむずするような奇怪な雰囲気があります。
本種は楮(こうぞ)や雁皮(がんぴ)と並んで、和紙としての利用が有名です。両者との違いは樹皮の構造にあり、繊維が互いに折り重なった網目状を示します。そのため目の詰まった光沢のある紙が作りやすく、しなやかな紙質とインク乗りの良さから、紙幣の原料にもなっています。

ユズリハ

ユズリハの冬芽。常緑の葉の中に映える紅赤色が特徴的です。同色の葉柄の根元にこぶのようについているのが側芽で、初夏に小さな花を咲かせます。
若芽から新緑の葉が伸び、先代の葉が順に落葉していく様から「譲」の着想を経て、代々続く家の縁起物として、家紋の意匠になっています。同様の理由から庭木として植えられることも多く、人の生活圏でよく見る樹木です。
近年は、火災の際に延焼を防ぐ目的で植えられる防火樹としても利用されているユズリハ。なにかと守ることに縁があるようです。

 

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