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秋のDOKI ROKKO | 三浦伸章の農業指導

はじめに

DOKIの敷地内で作られる野菜と果樹は、自然農法家・三浦伸章さんの指導の下、農薬・化学肥料を用いず栽培されています。六甲山の土壌は、一般に養分が乏しく作物の生育には適さない、とされている真砂(まさ)土がその成分の大半を占めます。
しかし実際に六甲山の自然を観察すると、巡る四季に伴って種々の植物達が生育できるだけの、充分な風土が存在しているように見えるのです。
DOKIの畑と果樹園は、作物を育てるという行為を通して、そんな六甲山が秘める恵みの神秘に触れる実験の場でもあります。今回の写真はその一幕。樹皮を剥がすとほんのり香るシイタケの匂いに、目に見えない存在を感じます。

シイタケ栽培

六甲山のコナラ、クヌギをホタ木に使用したシイタケ栽培。昨年から準備を進めて、今年の秋にやっと顔を出してくれました。
シイタケは傘の開き度合いで、未熟なものから順に冬菇(どんこ)、香菇(こうこ)、香信(こうしん)の3つに呼び分けられ、早摘みのものは肉厚で旨味が強く、主に乾燥シイタケに加工されます。
写真のように傘の表面に亀裂が入った冬菇は花冬菇と呼ばれ、縁起物として珍重されているようです。
3つの呼び名や亀裂を吉兆と捉える視点は中国文化由来のもの。日本でシイタケの姿を喩えるとしたら、おせちの陣笠煮や陣笠焼きがやはり一般的でしょうか。

生姜の収穫

10月に収穫した生姜です。ピンクと白のショウガをそのまま食べれば新生姜、これを数か月貯蔵することで、スーパーで見かける茶色の生姜になります。
実は新生姜の旬は10~11月。夏に並ぶものは早めに収穫されたか、あるいはハウス栽培のものです。もし秋の時期にお店で新生姜を見かけられたら、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
かたや夏の新生姜の柔らかな葉や芽は、江戸時代にも好まれていた立派な食材です。
東京都港区にある芝大神宮の祭礼では、当時盛んに生姜市が開かれていたようで、江戸の名所・名物行事を描いた浮世絵集「江戸自慢三十六興」にも市の様子が登場しています。

ニンジンの種取り

9月に行ったニンジンの種取りです。
密集して咲く花そのままについた実は、40日ほどかけて次第に茶褐色になっていきます。ミニチュアサイズのオナモミのようなトゲトゲの実が乾いたら、穂先を手で揉んで種を取り外します。穂を揉んでいると、不思議と良いにおいがしてきます。桃の皮に似たかすかな甘い香りです。
野菜のニンジンが日本にやってきたのは17世紀前半、江戸初期の「多識編」という文献に登場しています。東京都北区滝野川では、深い黒土土壌に適した長さ1メートルにもなる滝野川ニンジンが作られていました。
享保期(1716~1736年)から昭和20年代まで200年以上栽培され続けた特産品でしたが、現在では品種が途絶えてしまったようです。
山の落ち葉、生ごみ、もみ殻と米ぬかをコンポストに混ぜ込み、数か月寝かせることで、ぼかし肥料が作られます。
混ぜ返した際に湯気と共に醸された香りが立ち上れば、腐敗菌が消え、適度な湿度と温度が保たれている証拠。
落ち葉からなるこの堆肥は、主に茎の発育を目的として使用され、ニンジンやダイコンがそれにあたります。
昨年度栽培した大根は土中のミネラルが足りず発育が芳しくなかったため、今年はこのぼかし肥料で土を調整しています。

シソの実採集

シソの実採り。10月中旬ごろの写真です。穂先に向かって茎をしごくと、プツプツと楽しい感触で実が離れ、手のひらに集まってゆきます。
塩と混ぜてふりかけにしたり、塩湯で湯通ししてあく抜きした後つくだ煮にしても美味しく、収穫した時そのままのプチっとした食感が楽しめます。
紫色のシソは葉、種子、茎がそれぞれ漢方に用いられます。葉は特に薬効が高く、防腐成分も含まれるためお刺身のツマに使われます。実も栄養価が高く、βカロテンやビタミンEやビタミンKも豊富に含まれており、シソはまさに「薬味」な存在なのです。

みかんの収穫

温州みかんです。11月に収穫したので早生(わせ)になります。冬が深まるとともに中生(なかて)、晩生(おくて)に変わり、皮が厚くなり甘みも増します。
早生は酸味と甘みのバランスが良く、小ぶりな大きさと相まって、こたつに籠って何個も食べたくなる美味しさです。
背景に見えるござは防寒対策。ござの根元の部分を等間隔に20センチほど切り込み、放射状に地面に打ちこむことで根元の冷えを防ぐ仕組みになっています。
名に柑橘類の名産地、中国浙江省の温州を冠していますが、原産地は意外にもに日本。鹿児島県長島が生まれ故郷と推測されています。

カリンのハチミツ漬け

カリンの実のはちみつ漬け。種はパックに入れ、一緒に付け込んであります。
DOKIに植えられている果樹は若木が多く、結実できる齢には達していません。しかし移植の段階で実がついているものも一部あり、今回のカリンも実一つの収穫となりました。
梅やカリンにはアミグダリンという青酸配糖体が含まれています。これは漢方薬などで咳止め成分として用いられる一方で、多量に摂取すると中毒を起こす危険があり、特に種に多く含まれています。アミグダリンは加熱やアルコール漬け、はちみつ漬けにすることで分解されます。
カリンの実は生のままでは硬く、渋みもあるため食用には適しません。自然の恵みを体に優しく、また美味しく食べられるように工夫された先人の知恵に、いつも頭が下がる思いです。

コンポスト

山の落ち葉、生ごみ、もみ殻と米ぬかをコンポストに混ぜ込み、数か月寝かせることで、ぼかし肥料が作られます。
混ぜ返した際に湯気と共に醸された香りが立ち上れば、腐敗菌が消え、適度な湿度と温度が保たれている証拠。
落ち葉からなるこの堆肥は、主に茎の発育を目的として使用され、ニンジンやダイコンがそれにあたります。
昨年度栽培した大根は土中のミネラルが足りず発育が芳しくなかったため、今年はこのぼかし肥料で土を調整しています。

サトイモの収穫

夏の投稿にて紹介したサトイモ。その後もぐんぐんと生長を続け、子芋をたくさん作ってくれました。
食べきれない分は穴を掘り、土中で保存することにしました。サトイモは低温に弱いので、長期保存を目指す場合はより深く埋めてあげることがポイントです。
埋めたサトイモは休眠状態になるため、その上でサラダ菜などを植えて栽培することも可能なようです。

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