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DOKI ROKKOのハチミツ採り | 夏

巣箱の様子

6月に新しく入居した巣箱です。この二か月間、働きバチがプイプイと活発に行き来していました。
箱からハチ達があふれていたので、おそらく巣が大きくなりすぎたか、あるいは内部がかなり暑くなっているのでしょう。
木陰に置いてトタンの日よけも設けていますが、これ以上巣が大きくなってしまうと、暑さで蝋が溶けて巣落ちしてしまう恐れもあります。スズメバチ除けの金網を外して中を覗いてみます。いったいどんな様子でしょうか。

箱の片面を外してみました。巣箱の底ギリギリまで巣が築かれています。
重箱式の箱は巣を輪切りにして採取するので、巣の全容を見ることは難しいのですが、このタイプの箱ならば簡単に観察できますね。
巣内に常駐するハチ達の主な仕事は温度管理。夏場は35℃前後になるように羽を使って風を送り、なんと打ち水までして温度を保ちます。
また、スズメバチやアシナガバチが女王単体で冬眠して越冬する一方で、ミツバチは群れで冬を迎えます。ハチ達は休むことなく働き、気温が下がると身を寄せ合い、自身の体で断熱層を作り子供たちを守るのです。

大切なホームを襲った突然の大事件に、ハチ達が飛び出してきました。
性質が温和で人に親しむと言われるニホンミツバチも、流石に怒ったようです。巣の周りは無数のハチ達が飛び交い、防護服なしで近づくのは少し怖い雰囲気です。
現コロニーの女王バチと、次代の女王が育つ王台を残し巣を切り出していきます。
伝統的な養蜂では丸太を用いた「ミツドウ」という巣箱を使います。筒状にくりぬいた丸太の下辺に、ハチの出入り口を開けた簡単な作りで、巣箱ごと横倒しにして採蜜する方法が取られていたようです。貯蔵庫のみを切り出すために使われていた、かぎ型の独特な蜜切刀の記録も残っています。

ハチミツ採集

巣から漏れた蜜に、逃げ遅れたハチが溺れてしまいました。気の毒ですが、一匹ずつ箸で取っていきます。
指先に伝わるハチの震えからは、生々しい命の存在を感じずにはいられません。
やはり、重箱式の方がピンポイントに貯蔵庫のみを切り出せる分、ハチへのダメージは抑えられるようです。
セイヨウミツバチの養蜂では、主にラ式、あるいはホ式という枠板を使い、巣を壊さず遠心分離機で蜜を採っているようです。この板枠の発明をきっかけにして、セイヨウミツバチの養蜂は近代化への道を進むようになります。

かなりの蜜量が貯められた巣。手に取ると、ずっしりと重さを感じるほどです。
出来立ての巣の重量は驚くほど軽く、強度も十分ではありません。巣穴のハチがサナギになる際に出す絹タンパクなどで補強されることにより、数リットルにもなる蜜を蓄え得る堅牢さを持つのです。
また、老朽化した巣は部位ごとにかじり落され、都度作り直されて形を変えます。このような巣内での働きは、羽化して数週間の新人働きバチが主に担当しており、新しく働きバチが生まれると、彼らは巣外への仕事に回ります。
特徴的な六角形のハニカム構造で有名なハチの巣。その実態を紐解いていくと、そこで暮らすハチ達の生活環と深くかかわる姿が見えてきます。

今回はニホンミツバチ達の家であるハチの巣と巣箱、そして彼らの生態について紹介させていただきました。
彼らは周辺の環境に応じて拠点を移し、世代を超えて自分たちの理想の土地を探し続けます。運よく巡り合った場所にこしらえられた巣は、ハチ達とともに成長する生き物のようにも思えます。そこに蓄えられた蜜は、その巣の血、あるいは乳のようにハチとの間を行きかい、両者を育みます。
紀州熊野では、熊野大社に祀られる神のお使いとして、ニホンミツバチは信仰の対象にもなっていました。蓋に「熊野蜜御入」と但し書きした桶を山中に据え、彼らの来訪を待ったと言います。このようなミツバチへの信仰は洋の東西を問わず見られ、南方熊楠の随筆「本邦における動物崇拝」にはイギリス、中国のお話が載っています。
お住いの地域でも、ミツバチを見かけることがあるかと思います。少し怖いかもしれませんが、優しく見守ってあげてください。

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